ネタバレあり
朝井リョウの「正欲」を読んだ。
高校生くらいのとき、私は世界の全てを理解したいと思っていた。無知で愚かだった。
世界には分からない、理解できないことが多すぎる。流体力学という、存在を知っていて理解を試みても理解できなかったこともあれば、そもそも存在を知ることさえ困難なこともある。今作で取り上げられている性癖とか。
人には人の地獄がある、という言葉を知って、きっとそうなんだろうと表面上では思っていても、本当に骨身に染みて理解しているとは思えない。私は、常に自分が一番辛いと思っている。主観的な考えしか持てないので。人間ってそんなもんでしょう?
夏月と佳道は、不幸なのかもしれないけれど、幸運だと思う。
2人は中学生の時に出会って、大人になって再会して、つながることができた。
いなくならないことを約束するくらい、繋がることができている。
八重子は、大也とまだつながりを持とうと思えるのだろうか。孤独なままなのか。
大也が気の毒でならないのだが。やっと持てたつながりをきっかけに、逮捕されてしまった。八重子とつながることができそうだったのに、多分話す前に逮捕されてしまったのだろうか。でもあの日から逮捕は1ヶ月以上後だろうし、話はしたのだろうか。やはりイケメンのその後が気になる、こうやってイケメンだからと注目されるのが嫌なのだろうけど。
私は八重子みたいな感じなのだけど、八重子であり夏月でもある。八重子のように男性が苦手だし、夏月のように中学の同級生に馴染めない居心地の悪さと、両親に腫物にふれられるような辛さがある。
八重子の若さと、先輩姉妹を見てコロッと解決してしまいズンズン前に進めてしまう行動力や、
夏月の苦しいけど心の拠り所となっていた同じ性癖を持った同級生とあっさり結婚してしまうところとか、
現実そうじゃないから苦しくなってしまうんだろうな。そりゃあ物語だからサクサク進んでいかないと話にならないのだけど、現実うまくいかねえのよ。だからモヤモヤしているのかもしれない。こっちは行動してみてもずっとモヤモヤしたままなわけよ。ハッとして気持ちが開けて行動が軽くなった経験なんてないのよ。私も八重子みたいに頑張ろうとか思えるほど気持ちが若くないんだなと思った。気持ちが若くない、で片付けてしまっていい問題なのだろうか。
自分を登場人物に投影しちゃうからダメなのか。村上春樹の小説だと全く投影しないし、少女は卒業しないでも投影しなかったのに。
モヤモヤを言葉にしたくて、自分と似たような友人に本を渡した。なんだか分かってもらえるような気がしたから。
人生順調に進んでいる(この表現は間違っているかもしれない)友人の感想も聞いてみたい、そんな小説だ。
朝井リョウは、
どこでこんなテーマを見つけて来たのだろう。
検事が出てくるところに、大人になった、有名になったなと思う。無名の頃は、検事に取材なんてなかなかできないだろう。今まで読んだのは、高校生だったり、大学生だったり、就活だったり。